アーカイブ| 期待される設計事務所
建築画報
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- 197号(1987年4月)
- 165号(1982年11月)
- 107号(1976年9月)
建築と社会
加藤 眞昭 名古屋市建築局長
伊藤建築設計事務所におかれましては、このたび創立25周年を迎えられおめでとうございます。心からお慶び申し上げます。貴事務所は過去20回の中部建築賞、2回の名古屋市都市美観優秀建築賞の他、名古屋市都市景観賞、建設業協会賞、PC協会賞など数多くの賞を受賞しておられ、最近では愛知県新文化館名城地区図書館の設計競技において、優秀賞4点の1つに輝かれました。
私共にとって、このように立派な事務所が名古屋市にあることは大変誇りに思うところであり、鋤納忠治社長以下、80名余の優秀なスタッフによる御努力の現れと思います。
また鋤納社長は、現在、?新日本建築家協会(JIA)の東海支部長もやっておられ、特に東海地方における設計関係の発展に、大層御尽力いただいているところであります。
これから述べますようにこの事務所の都市景観に配慮した設計は、とてもすばらしいものです。
明治22年、名古屋市が誕生してから100年たった平成元年、皆様方に御協力いただきました世界デザイン博覧会が開かれ、お蔭様で大成功のうちに終えることが出来ました。
この会場施設の計画について、貴事務所に御力添えをいただいており、あらためて感謝申し上げる次第です。この事務所を始め多くの方々の御努力により、その時以来、名古屋へ来られる方々から、名古屋市はとてもきれいになった。という声が聞かれるようになりました。
今名古屋市は花と水と緑で演出された都市にしていこうということで頑張っていますが、建物を道路から一寸さげて、そこをこういったもので演出した、ポケットパークのようなものにし、うしろにあるデザインされた建物と共に、通る人の目を楽しませる。この事務所はすでにこういったことを実践しておられます。こういった建物が一つの線でつながって参りますと、すばらしい道路になりますし、面になると、回遊性のある街になるわけです。
先人の努力のお陰で、名古屋市は立派な道路計画が出来ていますが、そのなかでも代表的な東西の都市景観軸である。広小路通りを歩きますと、伊藤建築設計の作品を始めとして色々な賞をとった建物や、とらなくてもすばらしいものが数多く見られます。また、1600年代名古屋城建設と時期を同じくして開削された南北軸の代表である堀川も同様に見ることが出来ます。そういったことから、この両軸はすでに線にありつつありますし、特に都心部では面となって来ていると言えるのではないでしょうか。
もともと名古屋市は濃尾平野のなかに出来た都市でありますから、全体としては平面的な街であり、JR東海道線は、例えば東京から西に向いて走って来ますと、名古屋駅へ着く直前に90゜カーブして北向きに止まります。このことは他都市から来られた方は、特に曇または雨天の日、方向感覚がくるってしまうことがあります。昔はプラットホームに降りますと、名古屋城が見え、まさに尾張名古屋は城でもつ、と言われた通り名古屋市のランドマークの役割をはたしていましたが、現在は残念ながら見えなくなりましたので、何かこれに代わるものが出来るとよいな、と思っておりますし、市の主要な場所に、こういった建物があれば、非常にわかりやすい都市になるのではないかと思います。
伊藤建築設計事務所は、これまで数々の名建築を設計してこられ、各地域でランドマークの役割をはたしてこられました。
今後更にこういった素晴らしいものを数多くつくっていただくことを期待いたしまして私のお祝いのごあいさつとさせていただきます。
加藤 眞昭(かとう・まさあき)
1934年愛知県生まれ。
1956年 | 名古屋工業大学建築学科卒業。名古屋市建築局長 |