建築をとりまく環境と諸技術

建築をとりまく環境 
エレベーターが高層建築の建設を可能にし、エスカレーターが建築の自由度を広げ、そして冷暖房設備技術が建築の大規模化を可能にしました。社会が、新たに要求する建築性能を満足するには、その空間の安全・利便・快適性を実現させる技術の裏付け・提案・開発が、常に必要となります。

21世紀の今、地球環境に優しいが時代のテーマとなりました。それは、安心・安全と省資源・省エネルギーを目指した建築設計技術の確立が大きな課題となっています。又、建築には、それが建設される土地、即ち、立地条件に大きく左右されます。そこでの環境への配慮、さまざま法的規制への整合性を計ること、土地の開発条件や商業施設での大店立地法等の問題を解決する分析・手法や技術等が問われます。その他、時代の変化・進展に対応した用途変更(コンバージョン等)に伴う耐震・改修・更新等を可能にする技術が要求されます。

弊社はアーキテクトとエンジニアーが協働する設計専業の総合設計事務所として活動してきました。創立以来50年余りの間に培われた数々の設計技術を有し、時代のニーズに対応し常に改良・更新を加えながら、クライアント皆様方のご要望に応えてゆきます。 
資産としての建築に生まれ変わるために
省資源・リサイクルの時代を迎えた今、新しい建物をつくるよりも、優良なストック形式が重要視されています。資産としての建物には、その生涯にわたって、いくつかの機能が求められます。

持続するための経済性、安心して居住するための安全性、時代のニーズに対応できる順応性及び居住環境の良い快適性。私達は、ライフサイクルコスト(LCC)=建物の生涯にかかる全費用の経済性を考えた、より計画的な提案をいたします。このように生まれ変わったビルも、資産価値及びイメージUPの保持を守るため、将来に向けて計画的な保守点検が不可欠です。

ぜひ、私達とのコンサルタント契約をおすすめいたします。建物の生涯にわたり、お手伝いをさせていただきます。
ライフサイクルコスト(LCC)
LCC は、企画設計費、建設費、運用管理費及び解体・処分費にわたる建築物の生涯に必要なすべてのコストです。
■60 年間使用するとして、LCC を算定すると
・LCC の合計は、建設の為のコストの 5.9 倍
・竣工してから解体までのコストは、建設の為のコストの4.9 倍
■必要な修繕費・改善費を欠くならば、耐用年数は大幅に短縮され、減価償却費がかさむ。
ライフサイクルコストの管理
ライフサイクルコストの経済性を考えた、長期保全計画を作成し、計画に基づいた保全を提案いたします。
■補修、修繕、更新時期一覧
■建物の経過年数による性能・機能の変化
・建物は時間の経過とともに劣化するため、保守・改修・更新工事を行い、当初の性能・機能の状態に戻します。
■劣化の要因
・法改正による不適合
・情報化に対応できない
・陳腐化
・環境の変化
耐震診断・補強の望ましい建物
【参考】
耐震改修促進法
(1995年兵庫県南部沖地震後に制定)

1)1981 年以前に設計された建築物で、多数の者が利用する、3階以上かつ床面積の合計が1000㎡以上の建築物の所有者は、耐震診断を行い、耐震改修を行うよう努めなければならない。

2)所管行政庁は、1981 年以前に設計された建築物で、不特定多数の者が利用する、3階以上かつ床面積の合計が2000㎡以上の建築物の所有者に、耐震診断を行い、耐震改修を行うよう指示することができる。
改正耐震改修促進法
(2006年1月26日施行)

1)特定建築物の(用途に応じた)規模の引き下げ
幼稚園・保育所 2階・ 500㎡以上

小・中学校等 2階・1000㎡以上

多数利用(現行) 3階・1000㎡以上

道路閉塞させる住宅・建築物
2)特定建築物の(用途に応じた)規模の引き下げ
幼稚園・保育所 2階・ 750㎡以上

小・中学校等 2階・1500㎡以上

不特定多数利用(現行) 3階・2000㎡以上
診断から耐震補強・リニューアル工事
耐震補強システム
耐震補強の目的・方法は、建物用途によって異なります。
多種多様な建物に対応できる補強システムを提案いたします。
緑化施設(建築緑化)
国際的課題となっている地球温暖化への対応は建築界にとっても特に重要なテーマです。その原因とされるCO2の発生を抑制すること、吸収固定することは直接的な解決手段です。緑化施設(=建築緑化)は、一方では空調負荷を減少させることで、CO2発生を抑え、他方では、植物を育成することでCO2を吸収固定しています。緑化施設は地球温暖化対策の1つの解となります。また、ヒートアイランド現象対策にも効果が期待されます。

緑化施設は、地上にあった植物を単に屋上や壁面に移植する技術ではありません。新しい植物への環境を創造することです。そこには新しい都市景観や昆虫、鳥類、小動物を巻き込んだ新しい生物世界を築くことも考慮されなければなりません。

緑化施設には、国土交通省 緑化施設整備計画認定制度、名古屋市 緑化施設評価認定制度など、税制優遇措置や融資・利子補給などの支援も始まっています。
壁面緑化
▷名古屋市千種文化小劇場「ちくさ座」―2002年竣工・愛知県名古屋市千種区
建物負荷低減と周辺地域へのヒートアイランド現象の緩和
緑化資材の開発と多様なつる植物の活用
環境にやさしい公共建築物として市民へアピール

■ 受賞歴
第3回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール
壁面・特殊緑化大賞 国土交通大臣賞 (2004年度)
平成15年度 名古屋市都市景観賞 (2003年度)
第35回 中部建築賞 入選 (2003年度)

■東京都 壁面緑化ガイドライン(38ページ参照)
壁面・屋上緑化
▷大島造園土木豊田支店―2008年竣工・愛知県豊田市
壁面・屋上緑化による熱負荷低減の取り組み
周辺環境と調和する外観
建物と植物とを一体的に見せるディテール
多様な緑化方法
▷アーカイブ
一宮市民文化会館―1974年竣工・愛知県一宮市
内神田サニービル―1984年竣工・東京都千代田区
緑化施設
▷名古屋市千種文化小劇場「ちくさ座」―2002年竣工・愛知県名古屋市千種区
名古屋市千種文化小劇場は、都市部の交通量が多い環状道路に面した公共性の高い施設であり、外壁面を緑化することにより、地球環境保全に貢献し、「環境都市名古屋」に相応しい都市環境の創造に寄与している。

短期間に建物壁面の緑化を図るため、つる植物の登はんを補助・促進させる「ヤシガラ系マット」による緑化資材を開発するとともに、屋上部、地上部及び建物庇部の3方向に、8種類のつる植物を植栽し、壁面の早期緑化を達成している。

使用したつる植物は、登はん性つる植物と下垂性つる植物を混植し、常緑と落葉のつる植物もバランスよく配植し、冬期の都市景観形成の向上を目指すなど、つる植物の特性を考慮した樹種選定を行っている。この壁面緑化システムによりコンクリート壁面の断熱効果を高めるなど環境に配慮している。
緑化施設
アーカイブ
▷一宮市民文化会館―1974年竣工・愛知県一宮市


竣工当時は周辺に建物は少なく、巨大な壁面の景観調和対策としての壁面緑化を試みたものです。打ち放しコンクリート壁面にリブを設けました。そこを伝ってツタが登はんしています。大きな高さのある壁面は登はん性植物だけでは無理があるようです。下垂性植物とのバランスが必要のようです。現在一番勢いよく茂っているのは大道具搬入口です。すっぽりと緑で覆われています。隣接するタイルの壁にもツタが伸びています。タイルと緑との見事なコントラストを現しています。

(2009年7月10日撮影)
▷内神田サニービル―1984年竣工・東京都千代田区
神田界隈は狭い敷地に、建物が敷地いっぱいにたっているのが特徴です。道路も狭く街路樹は多くありません。その中のほんの僅かな空地を利用して緑化を図ったのがこの建物です。屋外階段のセットバックした部分にフジを植え、階段手摺に壁面登はん具を設置しました。植樹から10年を経た今、8階建ての屋上までフジが届いています。隣接する建物の壁に横にも枝を伸ばして、文字通り縦横無尽に広がっています。こみ入った街の中のほっとする景観になりました。

第5回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール
審査委員会特別賞 財団法人都市緑化技術開発機構


電化厨房
▷オークマ可児工場可児プラザ―2007年竣工・岐阜県可児市
■ 空調消費電力削減
■ 室内環境向上

厨房規模 800食
厨房面積 約320㎡
電化厨房機器計 約350kW
 加熱調理機器 234kW
 洗浄機器 44.6kW
 保管機器 58.1kW
 その他 15.8kW

換気設備
 換気方式 1種換気
 外気取り入れ機器
  空冷外気処理パッケージ
 排気設備
  排気フード(キャノピーフード)による排気
 排気(回数)
  調理室 42.5回/h→30.3回/h
  洗浄室 16.8回/h→11.4回/h
  パントリー  4.7回/h

換気風量調整前と調整後の室内温度
(赤は調整前、青は調整後を示す)

換気風量調整前と調整後の厨房系統エアコンの電力消費量
(赤は調整前、青は調整後を示す)

電化厨房に適した換気量に調整する前後の室内温度と空調電力消費量を計測しました。およそ30%の換気量を削減し、空調電力消費量を49%抑えることができました。
また、サーモグラフィ写真でも明確なように、高温となる部分が限定され、更なる作業環境向上につながっています。
測定結果
・室内環境測定結果において厚生労働省調理施設環境基準(HACCP)を概ね満足し、盛夏時においても28度を上回ることはなかった。
・上写真は回転釜付近の温度状態を示している。回転釜付近の高温に対し室内は良好な状態にある。
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防振設計
▷日本車輌製造研修センター ー2011年竣工・愛知県名古屋市熱田区
日本車輌製造研修センターは、名鉄本線、JR東海道本線に隣接しており、平成23年3月に竣工した。

本建物は用途上、静寂さが要求された。そのため、計画当初から建物内の体感振動の目標値を設定した上で、現地で計測した列車走行振動に基づき、動的解析による2階床の振動応答予測を行い、構造設計に反映させた。

また、竣工後の研修センターにおいて再度実振動計測を行い、2階床における振動レベルを検証した結果、設定目標を満足していることが確認できた。





日本車輌製造研修センター
(背後に走るのは 名鉄本線とJR東海道本線)


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天窓照明
▷カインズ矢板流通センター ―2011年竣工・栃木県矢板市
■天窓照明
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これまでのトップライトは、明るい範囲は限られ、夏には暑く感じられるものであった。トップライトの直下に拡散板を挿入することで、明るさの均斉度、断熱性、結露水滴落下防止が図られた。さらに、照度分布計算手法が開発されたことで、必要照度に応じた配置を検討できるようになった。

■ 照明電力の削減
■ 照度均斉度の向上
■ 作業熱環境の向上
 設置列数 12列
 設置間隔 平均10.75m
 設置延長 750m
 トップライト幅 1,000mm

 必要照度 200 lx
 操業期間 8時~18時
 目標消灯時間 操業時間の70%以上
■ 照度分布図
照明器具と同様に、照度分布計算手法(特許出願中) により、配置を決定。
(資料提供:静岡県工業技術研究所)



■ 荷捌き場内部(均斉度の高い明るい室内となった)
■ 実証調査(2011/4~2012/3)
 この天窓照明プロジェクトに参加したメンバーは、建築主(株)アイシーカーゴ様の協力を得て、およそ1年にわたって各種の調査を行った。この調査により、天窓照明として機能確認、省エネルギー効果測定、他の施設への応用などが期待される。

参加メンバー
 静岡県工業技術研究所(a)
 (株)スカイプランニング(b)
 東芝ライテック(株)(c)
 (株)伊藤建築設計事務所(d)

  ・トップライト照度分布調査(a・b)
  ・照明電力削減量調査(c)
  ・トップライト熱環境調査(d)
  ・トップライト褪色調査(d)

(11月30日相当 静岡の実測による)


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天窓電力シミュレーション
多目的ホールの音響改善への取り組み
▷安城市文化センター「マツバホール」の事例
 安城市の中央公民館として客席数約500席の「マツバホール」という多目的ホールをもつ施設の改修設計を担当した。安城市は、世界的に活躍するピアニスト、田村響氏、後藤正孝氏の出身地であることから、音楽関係者の声が強く、音響性能の良いホールが熱望されていた。安城市には他に1,200席の客席を持つ市民会館があり、すでに改修工事を済ませていたが、音楽関係者を満足させる音響性能ではないとのことで、文化センターの改修に期待がかかっていた。
 文化センターの改修は、外壁改修、内装改修など老朽化に対応するものであり、この機に市民ニーズに合わせた改修を検討した。また、ホールの客席天井が特定天井に該当し、建築基準法の不適格状態にあるため、対策が必要であった。ホール客席天井の脱落防止の改修工事に合わせ、音響性能を改善することが課題となった。
音響性能の向上のために
以下の点を改善する必要があった。
・残響時間の最適化(残響時間伸張)(空間ボリュームの拡大、隙間の削減)
・反射音のバランスの良い拡散(空間形状の変更)
・ホール内の静寂性向上(空調騒音軽減対策、防音建具の遮音性能改善等)
音響反射板の改修
 まず既設の音響反射板の隙間削減を検討したが、既存の音響反射板の改造では困難であると判断し、新設の対応とし、隙間を約9㎡に抑えることとした。多目的ホールとしての利用もあるため、音響反射板間の隙間をなくすことはできなかったので、安全面も考慮し150mmの隙間とした。

 建築音響の専門家の助言により、良好な響きを実現させるために、反射板の重量を重くし、各反射板の仕様を変えることにした。
客席から舞台方面をみる
天井反射板
ラワン合板t=12+ダンピングシートt=2+石膏ボードt=9.5+塗装仕上げ
正面反射板
ケイカル版t=12+ダンピングシートt=2+石膏ボードt=9.5+塗装仕上げ
側面反射板
ケイカル版t=12+ダンピングシートt=2+石膏ボードt=12.5+単板練付け仕上げ
客席内装改修
 客席天井の脱落防止対策が本来の目的であったため、内装改修は天井改修に影響する範囲に留める方針で設計をスタートさせた。空間ボリュームを大きくするために天井面の位置を変えたため、壁面にも影響があり、影響範囲を改修することにした結果、壁面の下部は既存とし、上部を新しい形状にデザインし直した。床面は、天井改修のための足場を設置する必要性から、座席の取り外し再設置とした。床仕上げは全面的に改修した。

客席天井
・天井面を波形にし、反射音をバランスよく拡散させた。
・空間ボリュームを大きくした。
(室容積 約3,200㎥→約3,500㎥)

客席壁
・ケイカル板成型材不燃リブ(木練付)とし、ピッチ、角度を多様な組み合わせとすることにより、ランダムな反射音を生み出すようにした。

客席床
・カーペットとし、歩行感、静寂性を重視した。ただし、階段部分の蹴上を反射面とするなど音響面で工夫した。
改修前
改修後
舞台から客席をみる
天井改修の前提として
 ホール客席天井は、複雑な形状でかつ隙間をなくす設計にしようとしたため、特定天井となる吊り天井にはせず、直固定天井とした。また、天井改修に伴い荷重が増えることになるため、ホール客席屋根部分の防水を変更し荷重を減らした。
断面図比較
音響シミュレーション
 設計時のシミュレーションで、下図のように反射音がよくばらつくように設定した。また、計算では空席時500Hzの残響時間が現状の1.13秒が1.46秒になると見込まれたため、残響時間を1.4秒以上になることを条件として工事を行った。改修後の実測では1.6秒となった。
ホール断面 改修前後比較
静寂性の実現
 ホール内の静寂性を向上させるため、改修前後の騒音値であるNC値を測定した。空調騒音の改善、防音扉の調整などを行った結果、改修前NC-39~40であったが、改修後はNC-25となった。コンサートホールレベルへの改善となった。
施設概要
所在地
愛知県安城市桜町17-11
敷地面積
9,255.95㎡
建築面積
3,194.75㎡
延床面積
6,054.21㎡
新築時竣工年
1981年
当該改修工事実施年
2018年
新築時設計者
株式会社山下設計
該当改修設計者
株式会社伊藤建築設計事務所
建築音響技術指導
浪花千葉音響計画有限会社