日本は2011 年から本格的な人口減少時代に突入し、建築・都市に大きな変革が迫っている。公共施設では統廃合や機能の見直しなどが必須となり、また企業においても事業形態の変化、合理化、維持などの対応が求められる。高度成長期に急ピッチで建設された学校・庁舎・公営住宅などの社会資本はここへきて老朽化が進み、社会経済や国民生活に深刻な影響をおよぼし始めている。新たな設備投資が難しい時代背景の下で、この「縮小社会」にいかにプラスの価値を与えるかが重要となる。
リニューアルのかたち・・・減築
既存のストックを有効活用する手法として、建物の一部を撤去する「減築」がある。減築による建物の総重量の軽減により耐震性の向上、光・通風環境の改善が図られ、同時に新たな設備の設置、構造上不利な部分の耐震補強をすることで、新しい価値が創出される。また長期的には光熱水費、修繕費など維持管理費の減少が見込まれる。
ここでは、大学キャンパスの既設校舎を減築して整備した高等学校・中学校の施設および減築により新たに生まれ変わった商業施設を紹介する。
澤村喜久夫
『建築画報372号』(2017年9月)より抜粋